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対比用前年値シナリオ

Patterns

状況

組織の変更でリーフレベルの部門が分割される場合がある。そうした場合、分割後の部門の予算や実績と対比すべき前年値はあらかじめ存在しないが、分割後の部門それぞれについて前年値を作成し、それと対比して当年度値をレポーティングしたいというニーズがある(分割された部門の前年対比はあきらめるという選択肢もあることに留意する)。

分割された場合に加えて、以下のケースでも、新たなリーフ部門での前年対比が単純には行えなくなる:

  • リーフレベルの部門が統合された場合

  • 組織ディメンションのメンバーツリーに「新旧統合組織ツリー」パターンを適用していて、リーフレベルの部門が異動した場合

これらの場合、前年対比用の集計メンバーを設けて、そのメンバーで前年対比する手法がある。これについては「対比用集約メンバー 」で説明している。

一方で、一般ユーザーからみて理解が容易になるように、集約メンバーを設けることなく新たなリーフ部門メンバー自体で前年対比したい場合もあるだろう。
また、「対比用集約メンバー」パターンには、部門が分割された場合において分割後のそれぞれの部門について前年対比することができないという制約もあるが、それが望ましくないと判断される場合もあるだろう。

これらの場合は、そのリーフ部門メンバーについて、前年度の実績値や見込値そのままではない前年値が必要になる。

以上はリーフレベルでの前年対比に関する要件だが、加えて、これらの前年値をもとに、集計レベルの部門でも対前年比較を行いたいことに留意する。

問題

変更後の組織のリーフレベルの部門について、前年の実績値や見込値そのままではない組替後の「前年値」をもとに、レポート上で前年対比をおこないたい。 これが可能であれば、リーフレベルの部門メンバーの「前年値」を変更後の組織ツリーに従って積上げることで、集計レベルの部門での対前年比較も可能になる。

配慮すべきことがら

  • 前年対比に関する制約: 前年対比可能な部門に関して、制約が少ないことが望ましい。

  • 特殊な運用が不要であること: 特に一般部門において、前年対比のために特殊な運用が不要であることが望ましい。

  • 前年値比較のための準備に要する手数が小さいこと: 前年対比のために、通常の運用に加えて管理者サイドで必要となる手数が小さいことが望ましい。

  • レポーティングの容易さ: フォームやExcel-Linkシートの作成に際して余計な考慮事項を付加しない方法が望ましい。

  • 前々年以前との対比: 前年対比ほどの重要性はないが、前々年以前との対比も必要となる場合がある。それへの対応にも同じ手法を適用できることが望ましい。

  • データ容量: 実績値や見込値のデータ量が大きい場合には、それをコピーして前年値として保持するとデータ容量が増大し、必要リソース量やパフォーマンスに影響を与える可能性がある。

解決策

  • 対比用前年値を保持するシナリオを、実績値や見込値を保持するシナリオとは別に設ける。 後者から前者にデータを簡単に取り込めるように、コピー用あるいはデータエクスポート/インポート用のフォームを用意する。前年値シナリオ上で、取り込んだ実績または見込値をもとに、組織変更を反映して前年値を組み替える。

組替額の区分保持

前年値シナリオ上で組替前の実績または見込と組替による変動額を区別して保持することが必要であれば、「データ種別」パターンを用いることが出来る。

会計年度との関係

前年値シナリオ上で前年値を保持する会計年度を、当年度とするか前年度とするかについて選択肢がある。例えば、X3年度に対する前年値を保持する場合、

シナリオ:前年値
会計年度:X2年度

とすることができるし、

シナリオ:前年値
会計年度:X3年度

とすることもできる。
いずれかに決める必要はあるが、いずれにしても大差はないと思われる。

予算のバージョンとの関係

予算について、1次予算、2次予算、…確定予算、というようにバージョンごとにシナリオを保持する場合がある。このとき、前年値も予算のバージョンごとに異なるかもしれない。例えば、3月決算の会社で12月頃から開始される1次予算の前年値は11月時点の見込とし、3月から4月にかけて仕上げられる確定予算の前年値は2月時点見込としたいかもしれない。

こうした場合、前年値シナリオを予算のバージョンごとに設けることで、タイミングごとの予算に対応する前年値を保持できる。すなわち:

前年値(1次予算向け)
前年値(2次予算向け)
…
前年値(確定予算向け)

というようにシナリオを設けることができる。この場合、予算シナリオのラベルからそれに対応する前年値シナリオのラベルを導出できるようにラベル体系を工夫することで、フォームやExcel-Linkの設定が容易になる。

適用の帰結

利点

  • 前年対比に関する制約: 前年対比可能な部門に関して、制約はない。

  • 特殊な運用が不要であること: 一般部門においては、分割/統合されていてもいなくても単にリーフ部門を指定して前年対比レポートを参照することができる。すなわち、特殊な運用は不要である。

  • レポーティングの容易さ:フォームやExcel-Linkを用いて前年値を表示する場合、シナリオとして前年値シナリオを指定すればよいだけである。

  • 前々年以前との対比: 前々年度についても当年度の組織変更後の値が必要な場合には、同様の考え方で対比用の前々年値シナリオを設ければよい。

制約

  • 前年値比較のための準備に要する手数が小さいこと: 解決策で述べたように、前年値フォームコピー用あるいはデータエクスポート/インポート用のフォームで初期設定する。こうしたフォームは簡単に作成できる。また、組替入力フォームも簡単に作成できる。一方で、データのコピーや組替入力自体は避けられない。

  • データ容量: データコピーを保持するので、データ容量の増加は避けられないが、fusion_place では、実データ容量に対して消費されるサーバーメモリー容量が小さいため、大きな問題にはならない場合が多い。実績データに関して伝票明細を保持している場合などは、それもコピー対象とすると容量が問題となりうる。こうした場合、前年値データ種別パターンが勝る可能性がある。

関連するパターン

先行パターン

後続パターン

  • 前年値シナリオ上で組替前の実績または見込と組替による変動額を区別して保持する場合は、「データ種別」パターンを用いることが出来る。

その他の関連パターン

  • 本パターンの代替案として、データを分割せずに可能な限り前年対比を行う「対比用集約メンバー」パターンがある。

  • 本パターンと同じように前年値を保持するが、前年値の区分保持のためにシナリオではなくデータ種別を用いる方法がある(「前年値データ種別」)。前年値を伝票明細などにドリルダウンしたい場合、考慮する価値がある。