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前年対比用組替データ種別

Patterns

状況

基本的には「対比用前年値シナリオ」と同様である。加えて、以下のような付加的状況がある。

  • 組替値の内訳を組替前値と組替差分に区分して保持したい。これはとくに、組替前値、組替値について詳細レベルにドリルダウンできるようにするための前提条件となる(組替前実績は伝票明細へ、組替値は組替要因別の詳細へドリルダウンする等)

  • 別の目的ですでに「データ種別ディメンション」を用いている。この場合、組織変更のための組替についてもそれを活用することが合理的である。

問題

変更後の組織のリーフレベルの部門について、前年の実績値や見込値そのままではない組替後の「前年値」をもとに、レポート上で前年対比をおこないたい。 これが可能であれば、リーフレベルの部門メンバーの「前年値」を変更後の組織ツリーに従って積上げることで、集計レベルの部門での対前年比較も可能になる

配慮すべきことがら

  • 前年対比に関する制約: 前年対比可能な部門に関して、制約が少ないことが望ましい

  • 特殊な運用が不要であること: 特に一般部門において、前年対比のために特殊な運用が不要であることが望ましい

  • 前年値比較のための準備に要する手数が小さいこと: 前年対比のために、通常の運用に加えて管理者サイドで必要となる手数が小さいことが望ましい

  • レポーティングの容易さ: フォームやExcel-Linkシートの作成に際して余計な考慮事項を付加しない方法が望ましい

  • 前々年以前との対比: 前年対比ほどの重要性はないが、前々年以前との対比も必要となる場合がある。それへの対応にも同じ手法を適用できることが望ましい

  • データ容量: 実績値や見込値のデータ量が大きい場合には、それをコピーして前年値として保持するとデータ容量が増大し、必要リソース量やパフォーマンスに影響を与える可能性がある

解決策

データ種別ディメンション内に、組替後の対比用前年値を保持するメンバーを設ける。これは、組替前の実績値や見込値を保持するメンバーは別のメンバーとする。 両者の関係については、以下のいずれかがあり得る。

  • (親子方式) 組替後メンバーは組替前メンバー親メンバーとするとともに、前者の配下には、組替差分値を保持するメンバーを置く(例を参照のこと。そのメンバーの下位にさらにメンバーを置いて組替差分を細分化してもよい)。組替差分データを入力すると、組替後のメンバーには、自動的に組替後値が設定される

  • (独立方式) 組替後メンバーは組替前メンバーと親子関係を持たない。この場合、「対比用前年値シナリオ」パターンと同様に、組替前メンバーから組替後メンバー(またはその配下のメンバー)にデータをコピーする必要がある

親子方式の場合、組替前のデータをコピーする必要がないため、データ容量の面では有利です。一方で、コピーを避けるために、組替前データと組替後データは、同じ会計年度とシナリオに置く必要があります。
独立方式の場合、そうした制約はありません。

いずれの方式をとるにせよ、組織変更によって生じる組替額を加減する過程をデータ種別ディメンションのメンバーツリーとして表現することもできます。そうすれば、フォームでのドリルダウンによって組替過程を表示することが容易になります

(1)親子方式:シンプルな例

親子方式の基本形では、組替前の報告値に組替による修正を加えて組替値を求めるメンバーツリーをデータ種別ディメンション内に設ける。

データ種別ディメンション

組替後 [AF_RCL] …… 組替前+組替
 ∟ 組替前 [BF_RCL] …… 該当年度における報告値
 ∟ 組替 [RCL] …… 組替

(2)親子方式:赤黒方式での修正

親子方式をとる上で、差額入力するのではなく、元のデータをいったん取り消し、組替後の正しいデータ種別値を総額で入力したい場合もあるかもしれない(会計でいう「赤黒方式」。赤が取消データで黒が正しいデータである)。その場合、組替の内訳を「組替前値取消」「組替後値計上」に分けることで対応できる。

データ種別ディメンション

組替後 [AF_RCL] …… 組替前+組替
 ∟ 組替前 [BF_RCL] …… 該当年度における報告値
 ∟ 組替 [RCL] …… 組替
   ∟ 組替前値取消 [RCL_RED] …… 組替前値(マイナス入力)
   ∟ 組替後値計上 [RCL_BLACK] …… 組替後値

この場合、「組替前値取消」は「組替前」の値の符号を変えて設定するようフォームを組むこともできます。

(3)親子方式:組替額内訳を明示する

組替額の内訳を区分して示したい場合があるかもしれない。その場合、「組替」メンバーの配下に、区分別のメンバーを置くこともできる。

データ種別ディメンション

組替後 [AF_RCL] …… 組替前+組替
 ∟ 組替前 [BF_RCL] …… 該当年度における報告値
 ∟ 組替 [RCL] …… 組替
   ∟ 組替前値取消 [RCL_RED] …… 組替前値(マイナス入力)
   ∟ 発生値組替 [RCL_INCURRED] …… 組替後値(発生額)
   ∟ 配賦額組替 [RCL_ALLOC] …… 組替後値(配賦額)

この例で、「配賦額組替」の配下に子メンバーを置き、配賦内容別にさらに細分することも可能です。

(4)独立方式:シンプルな例

独立方式の基本形では、データ種別ディメンション内に、組替前の報告値と親子関係なく、組替後値メンバーを設ける。

データ種別ディメンション

報告値 [REPORTED] …… 組替前の報告値

組替後 [AF_RCL] …… 組織変更組替後値

報告値をもとに組替えたデータを「組替後」メンバーに取り込みます。

(5)独立方式:組替ツリーを持つ例

独立方式でも、組替ツリーを設けることはできる。

データ種別ディメンション

報告値 [REPORTED] …… 組替前の報告値

組替後 [AF_RCL] …… 組替前+組替
 ∟ 組替前 [BF_RCL] …… 該当年度における報告値
 ∟ 組替 [RCL] …… 組替

報告値をそのまま組替前値とみなすことと、組替ツリーを持つことは、互いに独立した設計判断であることにご留意ください。

適用の帰結

利点

  • 前年対比に関する制約: 前年対比可能な部門に関して、制約はない

  • 特殊な運用が不要であること: 一般部門においては、分割/統合されていてもいなくても単にリーフ部門を指定して前年対比レポートを参照することができる。すなわち、特殊な運用は不要である

  • レポーティングの容易さ:フォームやExcel-Linkを用いて組替後値を表示する場合、データ種別として「組替後」を指定すればよいだけである

  • 前々年以前との対比: 前々年度についても当年度の組織変更後の値が必要な場合には、前年対比用に加えて前々年対比用の組替後メンバー(と組替ツリー)を設ければよい

制約

  • 前年値比較のための準備に要する手数が小さいこと: 親子方式の場合、組替前値のコピーは不要である。独立方式では、一方で、データのコピーや組替入力自体は避けられないが、前年値コピー用あるいはデータエクスポート用のフォームで初期設定できる。こうしたフォームも組替入力フォームも簡単に作成できる

  • データ容量: 親子方式の場合、データのコピーを保持しなくて済むので、データ容量の増加を避けることができる(ただし、赤黒方式ではコピーが必要)。独立方式では、コピーの保持は避けられないが、fusion_place では、実データ容量に対して、消費されるサーバーメモリー容量が小さいため、大きな問題にはならない場合が多い。実績データに関して伝票明細を保持している場合、ドリルダウンの仕方を工夫すれば、伝票明細はコピーしなくて済む

関連するパターン

先行パターン

後続パターン

その他の関連パターン

  • 本パターンの代替案として、データを分割せずに可能な限り前年対比を行う「対比用集約メンバー」パターンがあります

  • 本パターンと同じように対比のために前年値を保持するが、保持のために「データ種別ディメンション」ではなくシナリオを用いる方法があります(「対比用前年値シナリオ」)。別の理由でデータ種別ディメンションを用いる必要がない場合は、この方法で、本パターンよりシンプルに対応できる可能性があります