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データ種別

Patterns

状況

計画・見込・数値といった管理会計で扱う数値は、様々なソースデータをもとに補正や加工を経て作成される。以下はそのいくつかの例である:

  • 管理会計上のP/L実績の元データは、財務会計システムからもたらされる。財務会計システムでは経費は部門別に把握している一方で、売上高は部門別に分かれていない。そうした場合、販売管理システムからのデータをもとに、売上高を部門別に区分する必要があるかもしれない。
    この場合、 管理会計P/L=財務会計P/L+売上高補正 である

  • P/Lの実績・予算・見込みいずれについても、配賦処理を経てはじめて管理会計上の報告数値になる。
    この場合、 配賦後(報告)数値=配賦前数値+配賦額 である

  • 連結会計では、各社の個別報告値の単純合算結果をもとに、会社間取引消去、未実現利益消去といった連結修正をほどこして、連結報告値を作る。
    この場合、 連結報告値=単純合算値+連結修正 かつ 連結修正=会社間取引消去+未実現利益消去 である

問題

様々なソースデータをもとに、目的とするデータを組み立てる過程を効果的にサポートしたい。 すなわち、組み立て過程で付加される種々のソースデータを区分して表示でき、かつ、ソースデータの修正が必要な場合には、特定のソースデータだけ選択的に修正できるようにしたい。

配慮すべきことがら

  • 科目との直交性: 売上高の補正を例にとると、「売上高(補正前)」「売上高(補正)」「売上高(補正後)」といった科目を設けて、売上高(補正後)=売上高(補正前)+売上高(補正)というように補正後値を算出することも可能である。しかし、この方法では、補正前、補正、補正後いずれのデータを表示するかに依存してP/L科目の並びが異なるので、最大3種類のフォームが必要になる。補正の種類が増えるとフォームの数も増える。かつ、ユーザー要件の変更で数値の組み立て方が変わると、レポートに影響が出る。こうしたことを考慮すると、データの組み立て方を、科目並びとは別の(すなわち直交した)問題として扱えることが望ましい。

  • 消費リソース: 組み立て過程をあらわすデータを保持することでメモリーなどリソース消費量が極端に増加しないこと

  • ドリルダウン分析/監査証跡の提供: 報告値から、中間データ・ソースデータまで簡単にドリルダウンでき、根拠データを示せること

  • 複数の組み立て過程への対応: 実績と予算では、元データの種類や組み立て方が異なる場合がある。このように、データの組み立て方が複数通りある場合にも、過剰に複雑にならないこと

解決策

ディメンションをひとつ設けて、データの組み立て過程をあらわすメンバーツリーをその中に置く。当該ディメンションを元帳にて使用する。 メンバーツリーの末端には、元データの種類をあらわすメンバーを置き、集約レベルには、中間的あるいは最終的な算出データをあらわすメンバーを置く

このディメンションとそのメンバーを「データ種別」と呼ぶ。調整ディメンション、データソースディメンション、配賦ディメンション、連結修正ディメンション等と名付けられる場合もある。

(1)売上高の組替
  • 売上高が、会計システムでは部門別に区分されていないので、管理会計上、販売管理システムデータをもとに部門別に組み替える

データ種別ディメンション

調整後 [AF_ADJ] …… 調整前+調整
 ∟ 調整前 [BF_ADJ] …… 会計システムからの実績用
 ∟ 調整 [ADJ] …… 管理会計での調整

上記のデータ種別ディメンションで、会計システムからの実績データは「調整前」に取り込み、販売管理システムからのデータは「調整」に取り込む。「調整後」は、上記メンバーツリーにしたがって自動的に算出される。

勘定科目 データ種別 A部門 B部門 共通 合計

売上高

(調整前)

1,005

1,005

(調整)

600

400

-1,000

0

(調整後)

600

400

5

1,005

この例では、会計システムからの売上高データ(1,005)は「共通」部門の「調整前」欄にインタフェースされます。一方、販売管理システムで把握されている部門別売上高をA・B部門それぞれの「調整」欄に投入し(600と400)、その合計を、符号を変えて「共通」部門の「調整」欄にも設定します(これはフォームのインポート処理で設定可能です)。この例では、会計システムと販売管理システムの売上高合計が合っていません、これは会計システムに直接、売上修正の伝票が入力されているためかもしれません。こうしたことがあるので、会計システムのデータを販売管理システムのデータで上書き置換することを避け、データソースであるシステムごとにデータが区分されるよう、データ種別ディメンションを設けるわけです。

(2)配賦処理
  • 庶務課が一括して支払っているオフィス賃借料を人員数比などで各課に割り振る

データ種別ディメンション

配賦後 [AF_ALC]
 ∟ 配賦前 [BF_ALC]
 ∟ 配賦 [ALC]

 「配賦」とは、費用などをその負担者に割り振る処理のことをいいます。このケースで、配賦前・配賦・配賦後の関係は、先ほどの売上高組み替えのケースでの、調整前・調整・調整後の関係と同じです。

勘定科目 データ種別 営業1課 営業2課 庶務課 合計

賃借料

(配賦前)

50

50

(配賦)

30

20

-50

0

(配賦後)

30

20

0

50

(3)複合的なデータ種別

組み替えも配賦も発生するなら、データ種別ディメンションは下図のようになるでしょう。この例では、調整前データにまず調整が加わり、その結果が配賦されるという、データの組み立て過程に沿ってメンバーツリーが構成されています。データ種別のメンバーツリーの形は、固定的に決まっているわけではなく、要件に応じてさまざまに工夫することが可能です。

データ種別ディメンション

配賦後 [AF_ALC]
 ∟ 調整後・配賦前 [AF_ADJ]
    ∟ 調整前 [BF_ADJ]
    ∟ 調整 [ADJ]
 ∟ 配賦 [ALC]

(4)データ種別の細分化

さらには、調整や配賦の種類に応じて、データ種別を細分化することもできます。

データ種別ディメンション

配賦後 [AF_ALC]
 ∟ 調整後・配賦前 [AF_ADJ]
    ∟ 調整前 [BF_ADJ]
    ∟ 調整 [ADJ]
       ∟ 売上組替 [ADJ01]
       ∟ ロイヤリティ月次予定計上 [ADJ02]
       ∟ …
 ∟ 配賦 [ALC]
    ∟ 共通経費配賦 [ALC01]
    ∟ 拠点バックオフィス費配賦 [ALC02]
    ∟ 本部・本社費配賦 [ALC03]
    ∟ …

適用の帰結

利点

  • 科目との直交性: データ種別は科目とは別のディメンションなので、ひとつのフォーム(あるいはExcel-Linkシート)でデータ種別メンバーを切り替えるだけで、補正前データでも補正後データでも表示(あるいは編集)することができる。補正の種類が増えるた場合も、同様にデータ種別メンバーを切り替えて対応できる。縦軸あるいは横軸にデータ種別を並べている場合には、「伸縮する軸」または「伸縮する縦軸(Excel)」パターンで、データ種別メンバーの追廃を軸に自動的に反映できる

  • 消費リソース: fusion_place では、ディメンションをひとつ増やしてもメモリー消費は大きくは増加しない。例えば、各科目について配賦前の金額に加えて配賦額を保持するようにしても、メモリー消費量が倍になるわけではない。配賦額は一部の科目についてだけ保持するとすれば、そのデータ分だけメモリー消費が増える(加えて、インデックスによるメモリー消費もいくらか増える)

  • ドリルダウン分析/監査証跡の提供: フォームのドリルダウン機能を用いれば、 報告値から、中間データ・ソースデータまで簡単にドリルダウンでき、根拠データを示すことができる

  • 複数の組み立て過程への対応: データの種類に応じて組み立て過程が異なるケースでは、データ種別のメンバーツリーを分けることができる。代替案として、メンバーツリーに属するメンバーのいくつかを実績専用・いくつか予算専用、残りを共用というように使い分けることもできる

制約

関連するパターン

先行パターン

後続パターン

  • 本パターンは組織変更にともなうデータ組み替えに用いることができる。「対比用前年値データ種別」パターンを参照のこと。

  • データ種別を細分化する方法に加えて、「案件番号」パターンを適用すると、仕訳番号のような連番を用いて修正データを細かく分けることができる。これは、修正の内容を分かりやすく表示することに役立つ。

その他の関連パターン