組織変更に対応する
経営管理システムにおいて組織変更への対応は重要です。一方で、組織変更への対応は場当たり的になりがちで、その都度その都度、泥縄式に行われる場合もあります。fusion_place には、組織変更への対応を秩序だって行うために役立つ種々のメカニズムが組み込まれていますが、効果的にそれらを使うにはアプリケーションのデザイン面で配慮が必要です。
当パターンクラスタ-には、組織変更への対応を、円滑に、過剰な負担なく実施できるようなデザインを実現するパターン群が含まれます。パターンは、いずれも、状況に応じて選択可能です。
組織ディメンションと画面/レポートを同期化する
組織変更に対応しやすいシステムの基本として、組織に関するマスターを変更した場合に、画面やレポートといったユーザーインターフェースに、変更されたマスター内容が自動反映される仕組みが必要です。fusion_place ではマスターはディメンションとして実装されますが、ディメンション内のメンバーツリーが変更されるとフォームやExcel-Linkシートにそれが自動反映される仕組みがあります。これは、科目や商品群にも適用できますが、組織変更対応という観点では、組織をあらわすディメンション(以下、「組織ディメンション」)が特に重要です。
-
伸縮する軸 フォームを使用すれば、組織変更を反映して縦軸と横軸が自動的に伸縮する画面やレポートを作成できる
-
伸縮する縦軸(Excel) Excel-Linkのテンプレート処理を使用すれば、組織変更を反映して縦軸が自動的に伸縮する画面やレポートをエクセルベースでも作成できる。横軸については自動伸縮できません
過去の組織ツリーでの集計レポーティングを可能にする
組織が変化していく以上、その時々の組織ツリーに即して、その時々の実績や予算を集計できることが必要です。これは、後述する「当年度組織ベースで前年対比をおこなう」とは異なる、よりプリミティブな要請であって、ソリューションも異なります。
以下の3パターンは、この問題に対する異なるアプローチです。組織変更前アプリケーション がもっとも素朴な解法で、いつでも使えます。要件が適合する場合は運用の手間も少なくて済みますが、変更前のツリーに従った集計結果を見るにはアプリケーションを切り替える必要があります。状況によってはこれは不自由と感じられるかもしれません。世代統合型メンバーツリー か 世代別メンバーツリー を用いれば、ひとつのアプリケーション内で、過去のデータは過去の組織に従い、現在のデータは現在の組織に従って、集計・参照できます。
-
組織変更前アプリケーション 旧世代の組織に従ったデータ照会のために、適切な時点のアプリケーション・バックアップをもとに、変更前の組織ベースでの実績管理のためのアプリケーションを提供する
-
世代統合型メンバーツリー 組織変更前の組織ツリーと変更後の組織ツリーをひとつのメンバーツリーに統合する。
-
世代別メンバーツリー 組織変更前の組織ツリーと変更後の組織ツリーを別のメンバーツリーで表現し、双方で末端レベルの部門のデータを集計してレポーティングできるようにする
世代統合型あるいは世代別のメンバーツリーを用いた場合の権限範囲を設定する
過去の組織ツリーでの集計レポーティングのために 世代統合型メンバーツリー を設けた場合、末端レベル の部門ひとつに対して世代ごとにメンバーが存在することになります。
一方で、 世代別メンバーツリー を設けた場合は、集計レベル の部門ひとつに対して世代ごとにメンバーが存在することになります。
ひとつの部門に対するメンバーが複数存在する場合、それらのメンバーに対するアクセス権限をどのように設定すればよいかという問題が生じます。fsuion_place におけるアクセス権限管理の仕組みであるアクセス許可タイプと業務責任単位は、ディメンションごとに指定できるひとつのメンバー(責任範囲指定キー)を起点にしてアクセス可能なデータ範囲を限定することを基本としているためです。
以下の2パターンは、この問題に対する異なるアプローチです。世代別の業務責任単位 の方がシンプルであり、要件が適合する場合は運用の手間も少なくて済みます。一方で、一般ユーザーの視点からは、業務責任単位の選択という余分な判断を要求しないという点で 権限範囲指定メンバー が望ましい場合もあるでしょう。
-
世代別の業務責任単位 組織ディメンションにおいて、ひとつの部門に対して世代別にメンバーが設けられる場合、その部門に対応する業務責任単位も世代別に設ける
-
権限範囲指定メンバー 組織ディメンションにおいて、ひとつの部門に対して世代別にメンバーが設けられる場合、世代別メンバーをまとめる集約メンバーを設ける。その集約メンバーに対応して業務責任単位を設ける。これにより、集約部門に対応する業務責任単位を世代別に設けなくて済む
当年度組織ベースで前年対比をおこなう
組織変更があった場合に、当年度組織ベースで前年対比を行いたい場合があります。
当年度組織ベースで前年対比を行うには、単に組織変更前と後の組織ツリーでそれぞれデータを積み上げることができればよいわけではありません。末端レベルの部門が分割あるいは統合されている場合、その部門のデータ値を前年対比する上で工夫が必要です。加えて、末端レベルの部門の前年値と当年値を新組織ベースで積上げて、集計部門レベルで対比するには、前年値の組替が必要になります。
また、世代統合型メンバーツリー を用いる場合、分割/統合に加えて末端レベルの部門が異なる事業部に異動するなど組織ツリー上の位置が変わった場合にも、前年値の修正が必要になります(前年までの実績等は旧位置のメンバーが保持している一方で、前年対比のためには新位置のメンバーで前年値が必要になるからです)。
本節のパターン群は、こうした問題に関する対応アプローチを示しています。
留意すべき事項として、当年度組織ベースで前年対比をおこなうには、ある程度の複雑性が運用に持ち込まれます。一方で、いったん予算ができれば期中の実績管理では予算や見込との対比が主軸となるために、前年対比は重視されない会社もあります。そうした会社では、前年対比に手間をかけるのは見合わないかもしれません。業務の実態に即してニーズの度合いを考慮して対応方法を決定することをお勧めします。ここで挙げるいずれの手法も、後付けで適用することは難しくないことにご留意ください。
-
対比用集約メンバー 組織変更で末端レベルの部門が統合された場合、統合前の旧部門の合計値と統合後の新部門値を対比するためのダミーメンバーを設けることで、新部門ベースでの前年対比を行える。部門が分割された場合にも、分割後の新部門の合計値と分割前の旧部門値を対比するためのダミーメンバーを設けることで、旧部門ベースでの前年対比であれば行える
-
対比用前年値シナリオ 組織変更で末端レベルの部門が分割あるいは統合された場合、新組織ベースで前年対比するためにデータの組替を行う。そのために、組織変更を反映して組み替えた前年値を保持するシナリオを設けて、末端レベルの部門に関する組替後データを保持する。組替後の前年度データを新組織ベースのメンバーツリーに沿って積み上げれば、集計レベルにおいても新組織ベースで前年対比が可能になる
-
前年対比用組替データ種別 上述の 対比用前年値シナリオ と同様、組織変更による組替後データを保持するが、保持のために、シナリオではなく データ種別ディメンション を用いる。シナリオを用いた方が直観的に理解しやすいと思われるが、データ種別を使用することで前年値のドリルダウンが容易になるというメリットがある